2007年10月30日火曜日

連鎖する虐待~母が鬼と化すとき~ みひろゆう



友人に借りたその晩に、一気に読んでしまった。実際の事件に取材、と書いてありますが、それ以上は書いておらず、どこまで実際に起こりうる…いや、起こった、起こっていることなのでしょうが…かなり衝撃の一冊です。一応巻末にフィクションとありましたが。

 カトマンズに暮らしていると、社会と、というか近所との付き合いなくして生活するというのはまず、とーっても難しいことで、家の中と言えど『閉鎖』された空間を作り出すのは結構大変なことです。孤立したくても孤立できない、周りが放っておいてくれない―ある意味プライベートがないというか(笑)それはそれでヤダなーと思うこともあるのですが、助かることもまた多くあります。また、そうした中で子育てのストレスを自然と発散出来ているように思います。子供は地域と一緒に育ち、育てられているのだなぁということ、そして私自身も他に支えられているということを実感します。

 些細なことから子供を虐待し、死に至るまでの経過が描かれてありますが、その母の気持ち、分かるような分かりたくないような…。本の中で「子供への体罰」は「今でも家庭では認められている」と書かれてあります。そのあと「躾という名目で」ともあります。ドキ。自身に思い当たる部分のある私は、ドキリとさせられ、同時に「どこからどこまでが躾で、体罰なんだろう?」というギモンも浮かんできました。それに、体に受ける傷のみならず、心に、精神的にもダメージを与えることが、体罰と言えなくないこともないだろう―――

それから、虐待を目の当たりにしながら、それをどうすることも出来ない周りの大人たちのことも詳細に描かれています。告発して、もしそれが間違っていたら?ドキリ。見てみぬフリも出来ないクセに、かといって積極的に問題に立ち向かうことも出来ない…まさに私もその一人であるから、痛いところをつかれた。虐待という問題からでてみると、思い当たるフシはいっぱいある。正しいと思っていても、それを貫くことは非常な勇気を必要とすることだから、つい楽な方へ、安易な方へ――見てみぬフリをしてはいやしまいか?いや、そうであるからこう、胸がザワザワしてしまうのでは…

 普段はほとんど見ないテレビを見ていたら、橋の上から子供を突き飛ばし(たのかどうか?落ちたのか?)裁判にかけられている女性の映像が目に飛び込んで来た。裁判でのやり取りで「落ちたあと、どうなりましたか?」との問いに、「見えなくなりました」と答えたという。

見えなくなった…

 永遠に…

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