現場は、表通りから一本入った、ちょっと静かな3ツ星ホテルの裏。インド大使館とイギリス領事館の近くで、巨木が道の両脇に並び、閑静なムードの通り。もともとあった木をそのまま生かして道路を作ったのか、木は押し並べてとても大きく、その根っこは歩道のレンガをモリモリと掘り返し、静かながら木の命の力強さを感じる空間。
短いながら木陰の気持ちよいその通りを歩いていくと、中には朽ちてしまいそうなもの、切り倒されて株になっちゃったもの、その両方か?朽ちてしまった為→切り倒され→しかしそれをゴミ箱として利用されているものもあり。その年季の入った木肌にイタズラ彫りされたものあり。看板を打ちつけられたものあり。ゆっくり見ながらダラダラと流すと、ここがカトマンズであることもつかの間、忘れてしまいそう。
そんな様々な木のドラマの中に…ひときわ胸を打つ光景が。
木は、もうずーッとそこに立っておりました。何年も何年も、通り過ぎる人間や動物たちを眺めて暮らしておりました。ある時、自分のスグそばに壁が作られると、人間たちのウワサで知りました。「オイラ、どうなっちゃうんだろう…」
心優しい職人さんは、この木の気持ちを大事に汲んで、木をそっと包み込むように壁を作ったワケですが、どうしたことかその木の方が先に倒されてしまったようなのです。そうして倒されてからしばらくして、壁の上に柵が作られたようです。
それでもなお木は、そこにあったことを忘れられないように、こうして面影を残し、壁もくっついていた時を慈しむように、このまま更に時を重ねていくことかと思います。
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